あれから私達は何かにとり憑かれたみたいに
傀儡の部屋に篭っていた。
周りの大人達は私達を見る目を次第に変えていった。
そうしている間にも時は流れていく―
【the setting sun】
Vo4
「!」
「ん〜?」
休憩をしようとお茶を取りに行ってた私に
駆け寄るサソリに「どうしたの?」と聞くと「なんでもない」
と返された。
「もーすごい勢いだったからどうしたのかと思ったじゃない」
「何も言わずにいなくなるなっ」
「お茶を取りに行ってただけよ?」
「何処へ行くにも一言掛けてから行きやがれ!」
「む…またサソリ言葉汚い!だめだよぉー」
「チィっ」
「っっ舌打ちしたわね!私舌打ち嫌い!」
「………」
最近のサソリは言葉使いがよくない。
言葉だけじゃなくて、態度も良くない。
そして何故か私が離れるとすごい勢いで探しにくる。
「まぁいいやぁ、一息いれよ〜」
「あぁ」
「今作ってる傀儡どうなの?」
「まだ稼動部分がうまくいかねぇ…」
「そかー私のもそうなのよねぇ…」
「お前のは大概無茶な設計のせいだろぉが」
「えっっ無茶な設計してないと思うんだけど…」
「出せ」
「うん?設計図?」
「あぁ」
「ちょっと待ってね…」
ガサゴソと作業机の引き出しを漁って設計図を取り出す。
「…相変わらず汚ねぇ」
「ちょっっっしょうがないじゃない!私線引くの下手なんだから!」
「線じゃねぇ、お前の机の中だ」
「…片付けます」
最初の頃は同じ机を使っていたのだけれど、
私の“なんでも詰め込む癖”が嫌なのか今では別々の机を使っている
「ここの稼動部分なんだけどねぇ…」
「あぁ…ここは、こうして――」
「なるほど!流石サソリ!」
「でも、此処は無理があるな…こうしたらどうだ?」
「えーそこ削ると此処が―」
二人で傀儡の図面を見ながらすったもんだやって
毎日が楽しくて楽しくて。
ずっとこんな日が続くんだって信じていた。
久しぶりに帰ってきたチヨママからとんでもない事を聞くまでは…
「二人とも忍になれ…」
「チっっチヨママ!どうして!?」
「おぬしらの生み出す傀儡…そして傀儡捌き…
どれを取っても造形師で終わらせるのは里の為にならん」
「オレはが入るなら構わないぜ…」
黙っていたサソリがさらっと了承したので
私はびっくりした…けど、なんで私が入るならなんだろ…
「私は…」
「どうせオレ達には拒否権なんざねぇんだよ…」
「え…そんな…だって忍になるのってみんな強制じゃないよね?」
「みんな…はな、いずれそうなると思っていたんだがよ…」
「、おぬしはワシの娘じゃ…それにセンスも良い、わかるな?」
「………チヨママ」
「おい、ババァ…条件がある」
自分の思考で一杯一杯でサソリの汚い言葉に突っ込む事すら
忘れてしまった。
「なんじゃ…」
「は必ずオレと同じ隊にしろ…その条件が飲めねーならもう傀儡は納品しねーし
忍にもなんねぇ」
「えっ納品?」
「オレ達の作った傀儡は傀儡部隊で使われてんだよ…」
「ええええええっっなんで!?知らなかったよ!?」
「当たり前だ、オレもババァもお前には言わなかったからな」
「お前達の作った傀儡はもはや実践でも十分使える、
それに二人は医療忍術まで取得しておるしな…」
「でも、忍になるのってアカデミーとかいう所に通うのよね?」
「お前達は十分実践でも戦えるからの、中忍選抜試験さえ通れば問題ない」
「チッ…何処までも用意周到なこった…」
「チヨママ…どうしてもやらなくてはいけない?」
「あぁ…そうじゃな」
「分かった…サソリの条件が通るなら私も構わないわ…」
「二人とも…頑張るのじゃぞ…」
「はい」
「あぁ」
そういってチヨママはまた出掛けて行った。
最近チヨママは昔に輪を掛けて家に戻らなくなったので
少し寂しい気もするけど、私にはサソリが、サソリには私が…
二人でいれば寂しい気持ちなんて感じなかった。
「ねぇ、サソリは傀儡が実践で使われてるの知ってたのよね?」
「あぁ」
「いつ気が付いたの?」
「数が減っていたからな…」
「えっウソ!」
「ずさんな管理してるお前じゃぁ気づけないだろうけどなぁ」
「む…ずさんって…」
「夜中に運び出してる奴をとッ捕まえて吐かせたんだ」
「うわ、無断で持ち出していたなんて…それってダメじゃないの?」
「ババァから許可をもらっていたらしいが…オレ達には一言も無かったからな」
「ねぇ!サソリ!!」
「なっなんだよ…」
「さっきから思っていたんだけど、チヨママの事ババァって呼ぶのやめてくれない?」
「…ババァはババァだろぉが」
「チヨママは私の親なの!親がババァなんて呼ばれて嬉しいわけないでしょ!!??」
「チッ…分かった」
「あーーーーーまた舌打ちした!!!」
「うるせぇガキだな…」
「ガキって1個しか変わらないじゃないか!」
「喚くんじゃねぇよ、うるせぇな…話が反れたじゃねぇか…」
まだまだ納得できないものの、いつまでも怒っていても仕方ないので
話を戻した。
結局の所、チヨママが許可して傀儡を試しに実践投入した所、
十分戦える代物な上、質も性能も良かった―
それをサソリが知っていたのは最近完成した自白剤を使って吐かせたから。
その後チヨママを問い詰めて、
私にはわからないように納期を決めて納品していた―
「その話が出た時点で、こうなる事は分かりきってた事だがな…」
ギリっと爪を噛んで眉間に皺を寄せるサソリはなんだか
【僕】から【オレ】に変わってもまだ幼く見えた。
「何ニヤついてやがんだ」
「え?べっつに〜…それよりも、忍になるんなら実践練習もしておかなくちゃだよね…」
「あぁ、そうだろうな…」
「…私はサソリほど上手に操れないんだけど…」
「オレは格がちげぇからな…クク」
「むーなんかむかつく…後で手合わせして泣いても知らないんだから!」
「泣くだぁ?そりゃぁオメーのことだろ?」
「絶対なかないもんっ」
「ククク…せいぜい頑張るんだな」
「よーしさっきの所仕上げちゃうんだから!!」
私達は会話を終わらせて傀儡作りを再開しだし、
お互いに自然と無言になって行く。
お互いの気配も、姿も、呼吸音も、手に取るように伝わる。
ただ、何を考えているのか…何を思っているのか…
それだけが伝わらない。